ドクターズコラム
院長について


アメリカ心臓協会(American Heart Association)が発行する最も権威ある雑誌「循環」(Circulation)の患者さん向けのページで冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)の早期発見の記事がありましたので紹介します。
筆者はボストンにあるハーバード医科大学ウド・ホフマン(Udo Hoffman,MD)先生です。以下はその要約です。(最後に柴本院長の個人的見解を載せています)

冠動脈疾患のスクリーニング

新しい画像診断技術の使用
(Use of New Imaging Technique to Screen for oronary Artery Disease)


冠動脈疾患は先進工業国では死亡原因の上位を占める。
しかも突然起こるため、見かけ上健康でもその危険性の高い人を早期に見つける必要性がある。
最近の画像診断(CT、MRI)の進歩で心臓カテーテル検査の様な浸潤性の高い検査なしで冠動脈を検査できる可能性が出てきた。しかし病気の予測には冠動脈硬化病変の組成、量を明らかにする必要がある。
現時点ではCTが一番有用と考えられている。
しかしながらCTの情報は硬化病変内の石灰化の量に限定されている。
石灰化の程度ではたして冠動脈疾患を予測しうるのか議論がある。

石灰化、冠動脈硬化、冠動脈疾患
粥腫(動脈硬化の塊)は動脈の壁を厚くする、時に血流を減少させる。この時に石灰が沈着する。
粥腫は破裂すると血流を遮断して心発作を起こさせる。その危ない粥腫は石灰化が有ることも無いこともある。その点が複雑にずる。
しかしT技術の進歩により直接冠動脈の石灰化を詳細に評価できる点に、血中コレステロール値等の様な間接的な検査よりも高い信頼性があるのではないか。
CT検査はどのように行なわれるか
EBCT(エレクトロンビームCT、日本ではあまり普及していない)とMDCT(多列検出器CT)で検査されるが台に寝るだけですぐ撮影できる(柴本医院では心電図で心周期に同期させる、息止め10秒)。被爆量も少ないとされている(0.7-3mSv)。石灰化の程度はAgatstonスコアで示される。
冠動脈石灰化の結果の意味は?
冠動脈に石灰化があれば症状がなくても動脈硬化は存在し潜在性冠動脈疾患があると考えられるが、スコアの高値と実際の心発作の関連は不明である。
みかけ健康な人のスコア
石灰化は年齢とともに増加する。男性は55歳から女性よは65歳から検出される。(残念ながら日本人のデータはない)。
スコアの予測的価値
=陽性の場合
スコアが高値になるとそれに比例して冠動脈疾患の頻度が増加する。CTによる危ない患者の発見率が高いのは石灰化を伴った粥腫がより危ないからであろう。スコアが高ければ冠動脈の狭窄を伴う確率は高い。

=陰性の場合
動脈硬化は否定できないが心発作の確率はきわめて低いだろう。
スコアは独立した危険因子か?
現在検討が進められている。
どのようなみかけ健康な人が検査を受けるべきか?
伝統的な冠動脈疾患の危険因子が存在し10年間で冠動脈疾患の発生率が高いと考えられる人。(アメリカのフラミンガム研究から危険因子の程度により冠動脈疾患になる確率が計算される。高いとは10年になる確率が20%を越す人を言う) それほど確率の高くない人でも危険因子を減らす努力の手助けになるだろう。
院長の個人的見解
日本人は冠動脈疾患の発生率が欧米に比し今のところ5分の1程度ではあるのでこの検査はアメリカほど重要視されないかもしれない。また石灰化スコアの日本人でのデータが存在しない、直ちにこれを日本人に当てはめることはできない。しかし過栄養化で糖尿病者が増え、コレステロールの値も急増欧米を抜きさる勢いである。今後冠動脈疾患は増加すると考えられ。ともあれ冠動脈疾患が心配な方はこのMDCT検査を受ける意味はあるだろう。
手前味噌で恐縮ですが、当院ではフォルム(血管の硬さを推定する)、頚動脈エコー(脳を養う血管の動脈硬化を見る)、エルゴメーター(運動負荷テスト)、MDCT(心電図と同期させてより正確に石灰化を同定する。更に造影剤を使って冠動脈をより直接に観察する)等、患者様の状態に応じた動脈硬化の検査を用意しております。